時代を超える“矜持” ― 新世代CB1100Fが描く未来の鼓動

 




時代を超える“矜持” ― 新世代CB1100Fが描く未来の鼓動

「伝統とは、守るべき“形”ではない。受け継ぎ、変えていく“魂”だ。」

その言葉を具現化したような存在が、いま目の前に立っている。
滑らかなカウルの稜線は、かつて1980年代に隆盛を極めたCB1100Fのフォルムを想起させながら、すべてが次元を越えて研ぎ澄まされている。あの頃と同じ「赤・白・黒」の3色を基調としたカラーリングは、風の中でただ美しい。だがその中に、熱を帯びた未来のエンジニアリングが潜んでいる。

このバイクは「未来型CB1100F」。ただのネオレトロではない。現代のライダーの感性と、これからのツーリングスタイルに適応する“進化のかたち”である。


レガシーと革新の交差点にて

CB1100Fという名称に胸をときめかせるライダーは、少なからず“空冷直列4気筒”という響きにロマンを感じる世代かもしれない。だが新型CB1100Fは、ノスタルジーに安住しない。

エンジンは、かつての空冷ではなく、水冷式の高効率DOHCユニットを搭載。だが、見た目は空冷のフィンをイメージさせるように造形されており、“視覚的温度”はしっかりと踏襲されている。
スロットルレスポンスは過敏すぎず、しかし1ミリの捻りにしっかり応える。都市の中で静かに主張し、峠道では獣のように吠える。マルチシリンダーが生み出す連続音は、鼓動というよりも旋律に近い。

このバイクは懐古的でも未来的でもなく、“今”という時間を生きている。
それが、真のCBスタイルなのだろう。


デザイン ― 彫刻のような力強さと繊細さ

新型CB1100Fの第一印象は、まさに“彫刻”だ。

フロントフェイスには、流れるようなLEDデイタイムランプが二本の稲妻のように走り、中央のヘッドライトユニットは鋭く構えた戦士の目のよう。ウインドスクリーンは低く抑えられつつ、適度な空力と視覚的シャープさを両立。

タンク周辺の面構成は非常に複雑だが、ラインのつながりに一切の破綻がない。視覚的には大胆でいて、触れた時の曲面は優しい。触れるたび、走るたびに発見がある。

後方に流れるように伸びるシートカウルは、かつてのCB-Fの系譜を思わせる形状だが、素材は軽量高剛性コンポジット材。シート下には緊急用のUSB-C電源と、走行データをリアルタイムに転送するロガーも内蔵されている。

このバイクはただ「懐かしい」のではない。「未来の中で、あの頃に会える」不思議な体験をくれるのだ。


峠道というキャンバスに描かれる“線”

最もこのバイクが生きる場所――それは峠道だ。

クローズドコースでも、もちろんその性能は存分に発揮されるが、タイトなS字、下りのブラインドコーナー、時折現れる舗装の荒れたセクション。それらすべてを含めた“道”を、CB1100Fは筆先でなぞるように駆け抜けていく。

前後サスペンションは電子制御式で、走行モードに応じて自動的に減衰特性を変化。峠道ではクイックかつ硬めに、街中ではしなやかに、ツーリング時は疲労を感じさせない中庸の設定に。

そして何よりこのバイクの真価は、「旋回」だ。
ライダーの意図を先読みするかのように、内足にかかる荷重を的確に路面へと返す。寝かし込みも、起き上がりもすべてが“自然”の中にある。

走ること自体が、静かな瞑想になる。


人機一体の最先端インターフェース

現代のバイクにとって、「人とのつながり」は操作系だけに留まらない。
この未来型CB1100Fには、Honda独自の**“Adaptive Riding Intelligence(ARI)”**が搭載されている。

・傾斜センサー
・天候データ連携(スマートフォン同期)
・ライダーの走行傾向記憶
・ナビと連動したコーナー情報提供
・“今この瞬間”に最適なエンジン出力調整

すべては、“走りを邪魔しない範囲”で行われる。違和感は一切ない。
それどころか、時折「自分の勘が良くなったのでは?」と錯覚するほど、直感的なライディング体験が味わえる。

このバイクに乗っていると、電子制御とライダーの距離は限りなくゼロに近づく。
それはつまり、「自分の身体が進化したかのような感覚」に他ならない。


所有することが目的になる“機械”

バイクにとって、最も重要なのはスペックではない。
触れたときに、跨ったときに、そして走ったときに「所有している歓び」を感じられるかどうかだ。

CB1100Fは、まさにその存在。

細部の仕上げは、職人のこだわりを感じさせる質感と光沢。タンクキャップの開閉音、キーを差し込むときの感触、スタートボタンを押すときのわずかなクリック感――
それらすべてが、ライダーの五感に“所有している”という確かな充足を与えてくれる。


終わりなき旅の相棒として

CB1100Fの新型は、旅のためのバイクであり、日常の中の非日常をもたらす存在でもある。

風を受け、曲線を描き、音に包まれ、鼓動と対話しながら走る――
そのすべてが、未来と過去と現在をつなぐ「道」となる。

だからこそ、このバイクのキャッチコピーは、こう言いたい。

「鼓動を、曲線で描け。」

それは、すべてのライダーの胸に刻まれる、新たなCB伝説の始まりなのだ。




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