特集:次世代オフローダーの進化系 — 新型TOYOTA FJクルーザー試乗記


 

■ レトロと未来が交差する、「FJ」の再誕

あの名車が、ついに帰ってきた。

2006年にデビューし、独特のレトロフューチャーなデザインと高い悪路走破性で熱狂的なファンを生んだ「TOYOTA FJクルーザー」。2018年に惜しまれつつ生産終了となった後も、北米や中東を中心に高値で取引され、今なお“伝説”の名を冠するにふさわしい存在として語られ続けてきた。

そして2025年。FJクルーザーは新たな姿で、完全復活を遂げた。

大胆にして挑戦的。それでいて本質的な“FJらしさ”を微塵も損なわないこの新型モデルは、果たして何を目指し、どこへ向かおうとしているのか。編集部ではいち早くプロトタイプに試乗し、その全貌を明らかにした。


■ デザイン:原点回帰と進化の融合

まず目を奪われるのは、やはりそのスタイリングである。

新型FJクルーザーは、初代のモチーフを継承しながら、現代の空力トレンドや安全基準を巧みに取り入れた意欲作だ。

フロントフェイスは丸型LEDヘッドランプを現代的にアレンジ。ブラックのグリルには大きく「TOYOTA」のレタリングが刻まれ、クラシックな印象を保ちつつも、精悍な眼差しを宿している。

サイドは力強いフェンダーアーチと角ばったキャビン形状が特徴的で、FJのアイコンとも言えるツートンカラーのルーフとCピラーの逆スラントは健在。

そしてリアビューでは、スペアタイヤを背負った堂々たる姿が、「これぞ本物のオフローダー」と言わんばかりの存在感を放っている。

細部を見れば、ルーフにはユーティリティ・キャリアが標準装備され、アンダーガード風のディフューザー、ブラックアウトされたウィンドウトリムなど、アウトドア志向のディテールが随所に光る。

言うなれば「過去から未来へと続くデザインの進化形」。FJという名を冠するにふさわしい、誇り高き造形である。


■ パワートレイン:選べる2つの心臓

新型FJクルーザーの注目ポイントのひとつは、選べる2種類のパワーユニットだ。

● 2.4L直列4気筒ターボ(ガソリン)

ガソリンモデルには、ハイパワーな2.4L直4ターボを搭載。最高出力278PS/最大トルク43.8kgmを発揮し、8速ATと組み合わせることでスムーズかつダイレクトな加速フィールを実現している。

● 2.8Lクリーンディーゼル(ディーゼル)

一方でロングツアラーにうれしい2.8L直4ディーゼルも選択可能。こちらは最大トルク51.0kgmを発生し、低回転域からの粘り強いトルクと優れた燃費性能が魅力だ。

どちらのモデルも、パートタイム4WDシステムを標準装備。センターデフロックやローギアへの切り替えもスイッチ一つで行え、岩場・砂地・ぬかるみといったあらゆるオフロード環境に対応する。


■ 走行性能:快適性と剛性の絶妙バランス

試乗したのは2.4Lターボモデル。舗装路から林道、さらには急傾斜の登坂路まで、じっくりとその挙動を確かめた。

まず驚いたのは、その「静けさ」と「しなやかさ」である。ボディ剛性は非常に高く、足まわりはしなやかに動き、細かな段差も上手く吸収。オフローダーらしからぬ上質な乗り心地が味わえる。

ステアリングの応答も的確で、低速域では取り回しがしやすく、高速域では直進安定性が際立つ。

そして何より、悪路における“強さ”は圧巻だ。車体下部には250mm以上の最低地上高が確保され、アプローチ/ディパーチャーアングルも前後共に優秀。電子制御デフロックやダウンヒルアシスト制御など、豊富な電子デバイスがドライバーを強力にアシストしてくれる。

この走破力と快適性の両立は、まさに“新世代のFJ”がもたらす新しい世界である。


■ インテリア:道具としての質感と快適性

インテリアもまた、FJらしさと現代性が巧みに融合している。

ダッシュボードは縦横を意識した構成で、視認性と操作性に優れる。オフロード走行時の振動にも耐えるよう、大型のスイッチ類が配され、グローブをはめたままでも確実に操作可能だ。

メーターはデジタル液晶とアナログのハイブリッド構成。中央には8.0インチのマルチファンクションディスプレイを搭載し、車両情報やナビゲーション、オフロード角度のリアルタイム表示なども行える。

室内空間は大人5人がゆったり座れるパッケージング。シートは防汚性の高い素材で仕上げられ、ラゲッジスペースはフルフラット化も可能。キャンプやアウトドア、車中泊にも対応する設計となっている。


■ テクノロジー:安全と先進装備の充実

FJクルーザーといえば“ワイルドさ”が売りだったが、今回の新型では先進安全装備も抜かりない。

■ Toyota Safety Sense(最新Ver.)
・プリクラッシュセーフティ
・レーンキープアシスト
・ダイナミックレーダークルーズ
・オフロードブレーキ制御機構 など

■ デジタル機能
・12.3インチのタッチディスプレイオーディオ
・OTAアップデート対応ナビシステム
・車載Wi-Fi
・スマートフォンとの無線連携(CarPlay/Android Auto)

つまり「本気で遊べるタフな道具」でありながら、「日常にも寄り添う快適な足」でもあるのだ。


■ 総評:名車の再来にして、新しいFJのかたち

総じて、今回の新型FJクルーザーは非常に完成度の高い一台である。

・従来のFJファンを納得させるヘリテージデザイン
・現代のユーザーを惹きつける快適性と多用途性
・本格オフローダーとしての性能と実用性
・選べるパワートレインと先進装備

そのすべてをバランス良く備え、決して“懐古主義”に陥らず、“FJの進化系”として見事に昇華させている。

価格はガソリン仕様が約450万円〜、ディーゼル仕様が約480万円〜を予定しており、発売は2025年秋とされている。

FJクルーザーは、単なる一台のSUVではない。それは“冒険心”を呼び起こす記号であり、“どこへでも行ける”という自由の象徴だ。

そして今、その旗印は再び掲げられた。



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